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執筆者の写真Licheng

不動産商品企画 まちづくり (6) 商品としての建築 - 販売ツールとしての建築模型の可能性例 - | COCOCHI DESIGNS ココチデザイン

更新日:2020年12月8日

分譲マンションや住宅などの不動産業界向け販売用プレゼンツールもデジタル化で多様化しており、現在は動画はもちろんVRも一般化してきました。 ただ、私たちが手がけるまちづくりは事業規模が小さいものが多いので、大型マンションのような大掛かりな販売用プレゼンツールを用意するのが予算的に難しく、私たちの手で施せる範囲の作業で行うしかありません。 CG動画や1/50スケールの建築分解模型を数戸分若しくは全戸分を私たちが手づくりで製作したものを販売事務所に置いて販売用プレゼンツールとして使用されます。 私たちが手がけるプロジェクトは「コンセプト住宅」と呼んでいて、まちや各住戸異なるコンセプトを理解していただきながら一邸一邸丁寧にまちを作り込んでいくので、建築分解模型は小規模事業ならではのアナログ感がよくマッチする販売用プレゼンツールとして機能していると言えるでしょう。 お客様に適切にコンセプトをお伝えすることが「コンセプト住宅」の生命線と言えるので、私たちが手を施した建築分解模型でメッセージ表現するのが肝と言えます。 建築分解模型とは、いくつかに模型パーツを分解できるようにするので、パーツを分解すれば住戸内の間取りも俯瞰して見る事が出来るようになります。 お客様の目の前で模型を分解すると、玉手箱の中を覗き込むように、ちょっとしたワクワク感があるので、皆さん、とても喜んでくださいます。 たまに小さなお子さんのオモチャになって壊れてしまいますが、その都度、販売事務所から修理の依頼があって対応するのが、まあ、ほのぼのしていて良い感じなのです。

不動産 建築模型 1 | architectural model
大阪・堺プロジェクト(13区画)販売用建築模型

私は国内で最新の大型マンションプロジェクトがあれば販売事務所兼モデルルームに見に行ったり、中国など海外に行けば同様に見に行くようにしているので、実は最新の魅せ方を研究していてよく理解しています。 中国に行く機会があれば大型マンションなどの販売事務所兼モデルルームを見るととても勉強になります。 いかに驚きと楽しさを演出するか良く考えられていて、テーマパークのようなワクワク感が満載です。 結局はどのような販売用プレゼンツールであっても、お客様に共感していただけるかの話しですので、あえて今の時代に建築分解模型でアナログ感を演出する事も逆に新鮮で、手間暇かかった手仕事感がお客様の感性に響きやすくなっているのだろうと思います。 私たちのプロジェクトでは小さいながらもまちづくりをしているので、人の温もりや繋がりなど、人間味のところで勝負しており、結果的に多くのお客様が共感してくださっているので、これはこれで有りの表現なのだと思います。 いまは建築設計事務所でも建築模型を制作する機会が減ってきましたが、やっぱり建築模型は暖かみがあって良いものです。 模型を見たら制作した人の性格がよく表れているもので、手書きのスケッチもそうですが、建築設計業界の良い文化として残しつつ、デジタル化にも対応していかないといけませんね。 さて、関西の大手電鉄会社による大規模開発プロジェクトの販売用プレゼンツールとして、1/10スケールの建築分解模型を利用した際の話しをしたいと思います。 このプロジェクトは大阪のベットタウンとして和歌山で大規模開発されたものの、最寄り駅からバスに乗らなければならず、交通の便もさほど良くない場所で、早々に売れ行きが鈍くなってしまい、あまり予算がかけられないけど、何かプロジェクトの動きを作らないといけないという状態で私たちに声がかかりました。 住宅開発地のプロジェクトを再生するという経験は豊富にありますが、今回は数千区画という桁違いに大きな規模なので、正直、私たちが頑張ったところでどうにかなる話しではありません。 プロジェクトの事業計画そのものが無謀であったと言うべきものだと思います。 おそらく起死回生を狙ったのでしょうが、直近に関西の著名な建築家に依頼して十数戸分の区画で建売住宅を建てて大々的にプロモーションしたものの、うまくいかずに売れ残るという悲惨な状態に陥っていて、そこの販売にも繋げる何かを予算をかけずにやりたいという事でした。 まちづくりというより、広告費も極力かけずに販売促進のきっかけを作ってほしいと言うものなので、広告代理店に頼めば良いものを広告代理店もお手上げ状態だったらしく、建築家の尻拭い的要素もあって私もこのプロジェクトに取り組むべきか相当悩みましたが、 クライアントの担当者が独立前のサラリーマン建築デザイナーだった頃からのお付き合いのある人だったので、何か大規模開発のプロジェクト再生の足がかりを作れればと思い、協力する事にしました。 クライアントといろいろ議論を重ね、ある一区間に別荘的なコンパクトなローコスト住宅を建てる事が出来ますよ、という触れ込みにする事を決め、モデルハウスを建てる予算がありませんので、1/10の巨大分解模型を制作して現地販売事務所に展示する事になりました。 1/10の模型はそれなりに材料の質感も出さないといけませんし、分解模型にしているので壊れないように考えないといけないので製作はとても難航しましたが、完成して巨大模型を置いてみると、販売事務所に来られたお客様の反応が良かったので、模型を撮影して広告を打つ事になり、おかげさまで興味を持ってくださったお客様が多くご来場くださり、大規模開発プロジェクト全体に再び目を向けていただくきっかけになりました。 模型を作った区間は一部アレンジされて建てられ、売れ残っていた建築家の建売住宅にもお客様が流れたそうなので、結果はまあまあ上出来だったと言えるでしょう。


不動産 建築模型 2 | architectural model
和歌山プロジェクト・プロモーション用 1/10建築分解模型

不動産 建築模型 3 | architectural model
和歌山プロジェクト・プロモーション用 1/10建築分解模型

不動産 建築模型 4 | architectural model
和歌山プロジェクト・プロモーション用 1/10建築分解模型

不動産 建築模型 5 | architectural model
和歌山プロジェクト・プロモーション用 1/10建築分解模型

不動産 建築模型 6 | architectural model
和歌山プロジェクト・プロモーション用 1/10建築分解模型

当初は企画と模型製作の仕事でしたが、広告を打つにあたり、販売価格を設定するために結局は設計と確認申請、工事予算調整など、一連の設計業務はしないといけなくなり、広告から逆算的に建築設計の作業を行うという、あまり経験した事のない思い出深いお仕事となりました。 模型が持つ力、活かし方によってはまだまだ可能性があるものです。


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